基調講演 「世界の登山道を歩いて」
小疇尚(明治大学教授)
小疇(こあぜ)でございます。渡辺さんと同じ高校、帯広三条高校を卒業いたしました。子供のころ学校の集団登山で日高山脈の端にある山々に行ったのが山登り最初ですから、かれこれもう、半世紀以上北海道の山と付き合っております。高校を卒業してから東京の大学へ進みましたので、夏しか北海道の山を登る機会がそれからなくなりましたけれども、卒業論文を大雪山で書いたたということがあって、その後もずっと毎年の様に、昨年も2度、大雪に参りました。今回は飛んで帰らなければいけませんけれども、秋に紅葉の頃また大雪山へ来るつもりでございます。そういうことで上川の街は毎年のように通っているんですけれども、最近は駅前のラーメン屋さんに立ち寄るだけで素通りをして来ました。
さて、そういうことで、私は大雪が大好きなのですけれども、学生以来山の地形、あるいは山の景観の成り立ち、いったことに興味があって、その関係でいろいろなところを歩いてきました。みなさんも方々おあるきになってたぶん自分の大好きな山、気に入った山をお持ちのことと思いますけれども、山の利用、あるいは山登り、登山の形態といったようなことも山のたたずまい、山の姿形と大変密接な関係があるだろう、それからまた山の利用というのはその土地の文化ともおおいに関連があるだろうと考えております。そういうことで、最近では山のオーバーユースでいろいろ問題になっておりますけれども、それぞれ共通項もありますし、それぞれに特殊な問題をかかえているということがあろうかと思います。そういうことについてちょっと今、日頃考えておりますことの一端を御紹介したいと思います。
スライドで御紹介をさせていただきますが、よろしいでしょうか。じゃあ、スライドをお願いいたします。まず、私の大好きな大雪からご紹介いたしますけれども。
地元の皆様には、もうおなじみの風景だろうと思いますけれども。大雪山の中でも私の一番好きなのは、この白雲からの南の眺めです。残念ながら昨日遭難事故がありましたトムラウシはここですけど。ここから左のほうに日高山脈がちらっと、それから右の方に夕張山地がちらっと見えておりますけれども、ここまで約130キロあります。130キロの間、街の明かりはおろか、道路も何も見えないし、人の痕跡、人が創った物が何もない、見えないというのは日本では恐らくここだけではないかと思います。
日本の山、大雪もそうですけれども、日本の山の大きな特徴は、遠くからは大きな山のってっぺんがみえるんですけれども、近くに行くと、前の山に遮られて山の上の方がどうなっているのかよく分からない、全く別世界が開けるということだと思います。
次、お願いします。南アルプス、日本第2位の北岳がこれです。3000m級の山がずっと並んでいますけど、日本の山というのは、あの山のてっぺんの高さがほぼそろっていて、ずっとこうあまりでこぼこがないんですね。こういう現象を山の定高性と言いますけれどもここらへんの尾根をご覧になってもずっとほぼ水平にずっとでっぱていて、谷のところですとんと落ちる。谷が非常に狭い。谷の中から山は見えない。そういう山の作りになっております。こういう山のつくりはヨーロッパとは、ヒマラヤとは、かなり違う。日本の山の大きな特徴となっております。
次、お願いいたします。これは、白馬岳の頂上から、剣、立山の連峰を見たものです。ご存知のようにこの辺に黒部の谷が走っていますけど、上から黒部の谷底が見えません。ということは、谷底から山は見えないということで、私も始めて黒部の谷に入ったときは空が非常に狭いのでびっくり仰天した記憶があります。山の高さがほとんどそろっていること、そして谷が深いということが日本の山の大きな特徴だろうと思います。
次、お願いします。日本で一番起伏の大きな所はやはり槍穂高の連峰だと思いますけれど、大キレットから北穂高の頂上の高さの差も実は500mありません。右端は日本のマッターホルンと異名のある槍ガ岳ですけれども、日本の山がこのようにでこぼこがあまりないという理由の一つは、山の隆起した時代が非常に新しいということ、それから氷河の痕跡、これカールですけど、それから大きなU字谷がありますが、氷河の侵食がそれほど激しくなかったという2つのことがかかわっているかと思います。
次、お願いします。日本のマッターホルンというのはこの先からここまでだと思います。これは、本物のもの、と言っては何ですけれども。日本の山とは違って回りから完全に切り離させて起立している。こういう山の姿というのは日本ではない。
次、お願いします。これはチョモランマ、チベット側から見たエベレストですけれど、ベースの高さ、この辺の高さは先程のマッターホルンの頂上ぐらいになる訳ですからここから4000mぐらいの高度差がある。非常に大きなピラミッド。まあ世界最大の、最高の山にふさわしい、堂々たる壮大な山だという印象を強く受けます。
次、お願いします。で、これはモンブランですけれども、モンブランはジュネーブの町からもよく見えますし、それから麓のシャモニーの町からもよく見えます。つまり谷がこれだけ広いわけです。そして斜面が急で途中までは森林ですけどそこから上は灰色の岩とそれからそれに白い雪氷を被ってる。これがまあヨーロッパやヒマラヤなどの世界の大山脈の山の姿だと言ってもいいだろうと思っています。日本の場合は残念ながら現在は氷河がありません。で、森林をちょっと抜けたところぐらいのところでピークを迎えますからこれくらいの所で一番高い山が終わっている。アルプスでの登山というのは日本のいわゆる山登りが終わったところぐらいからはじまっていると考えていただければよろしいかと思います。で、近代的な登山はこのモンブランの登頂、1786年でしたでしょうか、から始まるというふうにいわれておりますけれども、ヨーロッパアルプスを中心として近在的な登山が発達することになります。
次お願いいたします。で、今のシャモニーの町の反対側ですけども、よく見るとですね、こういう峨々たる山稜の下にこういうやや間傾斜の部分がついております。ここにも見えます。ここ、ここ、ここ、それからこの道のついているここですね。これはいわゆるU字谷、氷河が作ったU字谷の肩という地形ですけれども。そこまではだれでも行けるようになっているわけですね。そしてここから下を見る。それから対岸の山を見る。で、われわれ日本的な感覚で言うと、山道、これが山道。山道がつきるところからアルプスの登山が始まるわけですけれども日本の登山はここで終わるわけです。山道を歩くのが登山ということになります。そのために、まあ、いろいろな問題が起きるわけです。
次お願いします。つまりここにこう、氷食谷の肩っていうのがある。ここまでは誰でも行ける、いわゆる山道がある訳です。で、山道がつきるところから今度は登攀のルートがありますけれども、ルートというのはきちんとした道ではありませんから、人が通った痕跡はあっても安全に通行できる道ではありません。ですから、登山道の侵食とかなんとか言ってもアルプスでいう登山道というのはこういうところの道のところをいうわけです。でわれわれの世界、といいますか、日本の山のてっぺんまで延びる登山道とは全然性質が違うということを認識していただいたほうがよろしいかと思います。
次お願いします。これはちょっと暗くて恐縮なんですけれども、アルプスを描いた画家にセガンティーニという有名な画家がおります。セガンティーニのこれ晩年の作で有名な三部作の真ん中にある「自然」あるいは「存在」と題された、ご覧になるとお分かりになるように、農民夫婦が牛を連れて夕方牧舎に帰るその姿を描いたものなんですけれど、セガンティーニの絵をご覧になるとまあ上には、だだたる山稜を描かれてその上に白い空が広がるわけですが、図柄はみんな同じですが、下の方に村や町や教会が描かれていて、これは山の上の世界だということが分かります。で、実はここに描かれている、ここがサンモリッツの町です。この絵がある、セガンティーニ美術館というのはまさにこの美術館に収納されていることがわかります。これがあのサンモリッツのエンガーディンの谷ですね。で左の方がベルニナ側の谷で、ベルニナ側の山群がここにある訳ですけど。
次お願いいたします。今、牛がいた辺りから下を見たあたり。現在のサンモリッツの町です。でこのようにリゾート地というのは谷底にあって山が見えているわけですね。谷が広い。シャモニーもそうです。で山腹に森林があって、その上の間斜面、ここで昔から牛を飼っていた。あるいは東の方にいくと羊になりますけども、家畜を飼っていた。そういう生産の場であったわけです。そこにこう、牛が歩く道がついていて。そこを今いわゆるハイカーが歩いている。で登山はここから上がいわゆる山歩きということになるわけです。
次、お願いします。これはあの、モンブランが登られてから40年ほど経った1822年のグリンデルワルトの様子を描いた絵ですけども、こういう絵が残っているということは、もうすでに絵描きがこういうところへ行っていた。つまり自然というものがすばらしいものだと芸術家が認識する、そういう時代に入っていた。そして描かれているものをよく見るとですね、ここに観光客らしき人達が馬に乗っている。で、何か村の娘さんをからかっているのだか知りませんけれど。で、農家が点々と中心に教会がある。
次、お願いします。これ現在のグリンデルワルトで先ほどに描かれた道路が、これのもうちょっと上になるわけですけど、まあ家は増えていますすけど、道路や何かはほとんど変わっていないことがわかります。つまり百数十年前の村の様子がそこら辺に残っている。もちろん観光施設はずいぶん増えています。
次、お願いします。でこれがグリンデルワルトの町というか村です。で夏の間、牛を追っていわゆるアルプのところまで森林帯をぬけてここで牛をかっていたわけです。
次お願いします。つまり2000メートル前後の柵草原まで牛を追い上げてきたわけです。で今は農業が不振になって牛の数はかつてほどたくさんはいませんけれども、その牛の道をわれわれは歩いている。そして登山鉄道が山の上まで行く。アルプスの登山鉄道あるいはリフトのたぐいは19世紀の末から20世紀の始めにかけてつくられたものが大変多いわけです。ここもそうですけど。
次お願いします。でそういうのを利用するともう、いきなりアルプスの岩峰の頂上直下まで数十分で行くことができる。そしてまあ、こういうすばらしい山岳景観、ここにまたちょっと見えますが、4000メートル級の山々の真っ只中に身を置くことができる。下界からあるていどのことはうかがい知ることはできますけれども、雪渓の世界はこういうところだと、自然のすさまじい様相とそれから何ていいますか、自然の営みの驚きといいますか、というふうなもの抱かせる光景を目の当たりにすることができる。
次お願いします。このようにして登山鉄道やなんかであがることができる。それで森林限界から上のところがいわゆるアルプの草原になっていて、こう牧舎が点々として、草が点々として牛が飼われていて。ここにも牛が点々といますけれども、本来はこういう道は牛が歩く道だったわけです。今は軽トラックなんかも走っていますけども。そこを人が歩いている。ここ、登山電車でも上がれるし、人が歩いても上がれる。そういうところになっている。そこがまあアルプスの観光の中心の部分になっているということが言えるかと思います。
次お願いします。ヒマラヤも実は同じで。ここにエベレストが見えます。ネパール側、南側から見ていますけれども。谷が非常に広い。この谷幅が約4キロくらいあります。
この谷底の高さが3千数百から4千メートルちょっとくらいです。ここら辺に行きますと5千近くになりますけれど。そういうことで谷底を歩いていれば周囲の山が見える。で、しかもこの下は農耕地で人が住んでいて道がきちっと整備されている。ですからトレッキング、それからアルプスのハイキングっていうことが成り立つ。もし、こういう地形ではなくてそのまま日本の山のように谷が深く掘り込んでいれば、もちろんここもこう谷底が深いんですが、中途にこういう段がある、氷食期の肩があるわけですから、そこをずっと歩いていけば安全に山の観光が出来る。トレッキング、ハイキングができるそういう地形の構造になっている。もし、この高さがもっと高ければこれ、高度障害があって普通の人は行くことができないということになる。ということで舞台装置が非常にうまくできているんだと私は思っています。
次、お願いします。これはカラコルムの杏の里で有名な、フンザの谷です。これもまあ広い谷でU字谷の出口の所の平らとは言いませんけど、相対的に緩傾斜の所。そこのところに人が住み着いている。われわれからすると桃源郷のように見えますけれども、実際には生活は非常に厳しい。で、水のないところですから氷河の溶け水をもってきて、これ、全部灌漑ですね。オアシスですね。で、最近では氷河がどんどん後退していますから、後退にともなって融氷水の取り入れ口の位置をどんどんかえなければもってこられない。用水路の維持管理が非常に大変なようです。氷河があるところはまあアンデスもそうですけれども、高地が開けますけれども、裏の後ろの山に氷河がないところでは農業が成り立ちません。アフガニスタンもそれからこの辺もそうですけども、氷河がないこういうところの斜面の下は雪の溶け水を利用することになるわけです。冬の間、雪が降らない、あるいはさきほど町長さんからのお話でもありましたが、融雪がどんどんすすんでしまうと夏の一番農作物にとって水が必要な時に水がなくなってしまう。地球規模の環境の変化がこういうところでも及んでいる。
次お願いします。谷の広いのはカナダ、カナディアンロッキーも同じで、非常に広い。これ4キロどころではありません。これ、下に鉄道も通っていますけれども、周りの景色が非常に雄大ですから、そんなものはもうとても芥子粒のようなもので全く見えない。でしかも国立公園として古くから整備が保護管理が徹底していますので乱開発からは一見免れているように見えますけれども、ところどころ、やはりスキー場の開発等で森林が無残な様子を呈している所を目にするところもございます。
次、お願いします。ということでアルプス。ちょっと古いんですけれど、1990年のニューズウィークですけど、アルプス環境問題の特集があります。内容の説明は時間の関係で省かせていただきますけれども。酸性雨、それから土壌の流出、乱開発ということでアルプスが危機的な状態にある。で、このいちばん大きなのは森林帯なんですね。酸性雨で針葉樹がかれる、それから土壌の流出、それからここにはありませんが雪崩、これはさきほどご覧いただいたように谷が広い、でそこに村があって教会があってそして、この上で牛を飼うということをずっと続けていた訳です。森林帯の中に、登山鉄道とか、リフトだとかロープウェイがくっついたんですけど、それが最近ずいぶんたくさんのところでスキー場が開発される。森林を切る。そのために、ここは聖域でずっと残っていたのがこういうことで非常に危機的な状態にさらせているということです。
次、お願いします。で、アルプスはちょっと日本とは違いすぎるので東ヨーロッパでは3000メートル級の山はありません。いちばん高い所でも3000メートルに達しません。そこで東ヨーロッパはどうなっているのかと思いまして前年見にいきました。これはルーマニアのトランシルバニア・アルプスの山の上です。下から見るとトランシルバニア・アルプスという名前から想像できるように非常にごつごつしたように見えるんですけれど、いってみるとこういう緩斜面。一面の草、で羊が飼われている。遠目にはいかにも牧歌的に見えるんですが。
次、お願いします。一山越えてみるとこういう状態。羊の過放牧ですね。オーバーグレーズって言いますけれど。草が生える片っ端から、羊が食べてしまう。いうことで、もう山は荒れる一方。日本と同じでいろいろやっていますけれども、とてもじゃないけれども、もう手がつけれないということがお分かりだろうと思います。下の石ころがこうやって出てきていますからこうなったらもう岩の上には草が生えませんのでもう処置のしようがない。
次、お願いします。ところがですね、これ実はハイマツなんですけれども、かつてはこの斜面全帯がハイマツで覆われていたんですね。それが有史以前からヨーロッパでは、下では麦やなんかをつくる、そして山の上では羊や牛をかうというそういう農業体系でずっとやってきましたので。急斜面の木を切ると、災害が起こるということで、山の上のあるいはU字谷の肩。さきほどご覧いただいたアルプの部分ですね。これ実は潅木帯だったんですね、それをこう人間が作り変えてしまった。これは、もうずいぶん歴史時代に入る前から続いていることです。したがってこれは、羊飼いや牛飼いが歩いた道なんですね。それを我々が今歩いている。ところが、人がそういう所を集中して歩くようになると登山道の侵食が起こる。そして、ここをご覧になっていただくと分かるんですけど、ハイマツの下というのはポドゾルという針葉樹林の下の特殊な土壌。
次、お願いします。で、登山道の抉れた所を見ますと、昔ハイマツがポドゾルの上に生えていた何よりの証拠になる土、昔の土がそのままここに残っている。これ、ストックですから、1メートル50くらい掘れているのがお分かりになるかと思うのですが。このようにハイマツが残っているところはもう見事な緑なんですけど。それから上、こういう世界が広がっている。下から想像もできないような世界でびっくりしました。
次、お願いします。日本の場合は先ほども申し上げたように、山の高さがそろっているもので。しかも谷が深いものですから、どうしても山道は見晴らしのいい稜線を辿っていくことになります。日本の山道というのはそういうことで、下から辿行けば必ず山のてっぺんまで安全な道が続いているという形になる訳です。そこで、この、道がここまずいからじゃあ横に付け替えようとならない訳ですね。これ、一番通りやすい訳です。ところが山の稜線というのは一番自然環境が厳しいところで、冬には非常に凍結の作用を受ける。それから、日本の山は大部分がそうですけども火山灰を被っています。
次、お願いします。これは九州の九重の登山道ですけれども。これも厚い火山灰の層に覆われています。火山灰の層というのはふわふわしていて透水性がいいので、火山の斜面というのは普通水がないのが当たり前なんですけれども、このように人が歩くようになると植物が踏み荒らされ、そして土が踏み固められて透水性を失いますので、雨が降れば水が流れる。水が流れれば人は避けて歩きやすいところへ、歩きやすいところへと移っていきますので、ここにも人が歩いた形跡がありますけれども、どうしてもこういうことで土壌侵食がどんどんすすむ。
次、お願いします。で、日本では山の上で牧畜をやるという農業をやってきませんでしたからそういうことでは、自然がヨーロッパと違って残っているといってもいいだろうと思います。我々はそれが普通だと思っていましたので、私、アメリカ人の書いたものを読んでいて、山の上を牧畜に利用していないというのは、日本とか中国の東の方所くらいだと書いているのを見て、欧米の人達から見ると山の上の森林限界の上の方の草原を利用しないというのはむしろまれで珍しいことだということに初めて気がつきました。これ、マレな例で、北上山地ですが、半世紀近く南部でベコですね、夏の間牛を放牧していた。その過放牧でこういう状況になって、ここも約1メートルくらい火山灰の層が削られてそして瓦礫の山になって回復不可能な場所がどんどん広がっています。これは東京への飛行機の窓から北上の山地のところどころにこういった状態を見ることができます。火山灰というのは凍結の作用を非常に受けやすくて、凍ると霜柱が立つ。そして解けるとそれがぱさぱさになって風で飛ばされるということで土壌侵食が急速にすすみます。
次、お願いします。これはもうその典型で、アイスランドの中央部のヨーロッパ最大の砂漠とよばれているところです。もう本当に荒涼たるもので、車で走るとこのように土ボコリがもうもうと立ってデキ砂漠ですね。オーストラリアの内陸に広がっているようなああいう所で。砂丘はありませんけれども本当に荒涼たる世界です。
次、お願いします。ところがですね、ここ実はこれだけ3メートルの火山灰に覆われていた所です。バイキングが入植したころは相対的に地球があたたかかったときにあたるものですから潅木もはえていた。炭焼きの跡も見られます。で、そこで家畜の放牧をやる、その後少氷期を迎えて地球が寒くなる、そこで過放牧がでて植生が破壊され、そして凍結と風の風食によってですね、先ほどご覧いただいたたような砂漠化となる。これが最後の島になって残っている部分です。アイスランドでは飛行機から種を蒔いたりして緑化に努めておりますけれど、もういったん裸になったらもう旧に復するのはとてもじゃないけど大変。
次、お願いします。これは大雪山で北海岳の南側の斜面ですけれども、今日の午後ですか、次のセッションで登山道の問題も取り扱われるようですけれども、黒岳やなんかはよく知られてるかと思いますが、大雪山一帯、この辺一帯は永久凍土があるんですね。ここで大規模な構造土という地表面の模様が形成されているところですけれど、ここで人の背丈よりも深いガリーがたぶん掘られている。これ、永久凍土のレベルを下げることになるのだろう。将来的には永久凍土そのものがなくなっていくのではないか。さきほど町長さんが、自然が損なわれると旧に復するのはなんでも難しいとお話されました。植物はなんとか体裁を整えるだけであれば植えつけることができるのですが、こういう地形の変化というのは、一方の方向にしか変化がすすみませんから、つまり高い所からモノが流されて掘られていく訳で下の方から上の方へモノが動くというのはありえない。一度そういう変化が進行し始めると止まるところを知らない、となりかねない。
次、お願いします。ここから話ががらっと変わりますが、これはイギリスの湖水地方でワズワースがここに鉄道を施設するの反対してそれから自然保護運動が盛んになり、現在のナショナルトラストの発祥の地にもなっている訳です。ワズワースが保護しようとしたのはこういう田園風景なんですね。自然そのものの風景ではないんです。で、羊を飼ってそしてここ、山の上にも羊がいる。ワズワースはヘルべディンというこの辺で2番目に高い山へ登って感激のあまり、さる女性に詩を献呈するんですけども、私はそのヘルべディンへ行ってみて、てっぺんで羊の出迎えにあって愕然としました。とてもじゃないけれども何か一句浮かぶようなそういうあれではなかった。
次、お願いします。これがまあ、ケーズリックの町で自然保護運動の中心になったところで、ピーターラビットの里はもうちょっと左の方にあります。山の上はもともとはもうちょっと森林だったところです。今はほんとうに丸坊主で。上の方は先ほどの白神と同じで丸裸になっております。
次、お願いします。そういうことで、ヨーロッパでは早くから人の手が入っていましたので、新大陸ではそれこそ手つかずの自然を残そうとし、やがて国立公園の設定に結びつくわけです。ヨセミテ国立公園の場合には、これはあの、合衆国では2番目ということになっていますが、国から州が土地を譲り受けて州立公園として1968年でしたか、すでにナショナルパークという名前で管理されていたということです。ですから名前からいえばここのほうが古いんだということもいう人がいる訳です。
次お願いします。で、北米で2番目がこのバンフ国立公園で、本当に心うたれる原始の姿そのままという感じがいたします。実際にはここにずっとトレイルがあって、この山の下まではちゃんと道が整備されて誰でも行けるようになっています。
次、お願いします。山岳エコツーリズムフェスティバルin北海道のこの冊子を見ていましたら、実は国立公園はオーストラリアが世界で2番目だということで、「え、そうなのか?」ということで認識を新たにいたしましたけれども。これ、タスマニアのクレイドルマウンテン国立公園です。
次、お願いします。ここではこのようにですね、山道を保護する、日本から行く登山者が本当に数少ないのですけれどもそれでもこのようにして踏み付けから守ろうと。
次、お願いします。あるいはこういう山道、危険なところはこういう山道をつくってですね安全に歩けると共に岸壁に生えている特殊な植物が観察できるような工夫がされている。
次、お願いします。これは東南アジア最高峰マレーシアのキナバル、4100メートルほどあります。熱帯雨林の中から屹立したすごい山です。
次、お願いします。国立公園に入るのにまず、人数制限がある、そしてポーターとガイド、地元の人たちを雇わなければならないと登れないようになっている。それから、熱帯雨林で降水量すごいんですけど、このように完全に階段化されていて土壌侵食が起こらないような工夫がされている。
次、お願いします。で登山道の侵食と共に、もうひとつは先ほども話題にありました、次はトイレの問題です。これはウィーンの水源地になっているヨーロッパアルプスの一番東のはずれ2000メートルの山。この二つの山が2000メートルの山の左のはずれなんです。アルプスの。で、ここてっぺんに小屋がありますけど、ここまできちんと牛が走る道があって。現在は軽自動車でも走れるんです。こういうところを我々が歩いている。実はですね、ここの山小屋もバキュームカーで屎尿を汲み取っています。そしてこれを下りてきて登山鉄道でそれを降ろしています。
次、お願いします。これはスロバキアの二千六百数十メートルの山なんですけども。アトラ産地の2番目に高い山なんですが。ここにはこのロープウェイで上がれるんですが、いちどロープウェイであがると次のロープウェイで降りなければいけないことになっています。ですから人がここにはたまらない。あがると次あがってくる人と入れ違いにおりなければならない。ですからトイレなんか必要なわけですね。そういうようなこともやっている。
次、お願いします。それからもうひとつ関心することは、道標、道しるべなんかが非常によくできている。それからこういう標語にしても、自然を汚すなということでしょうか、ドイツ語とスロバキアの言葉でかいているわけですが、きのこをイメージさせるこういうプレートで、ほんとうに見ているだけでも楽しくなります。
次、お願いします。これはごみ収集ですけども、カナダのバンフ国立公園です。階段を上がってですね、大きなスチィールのバケットがあって、重たいふたをあけてゴミを捨てるようになっている。なぜそういうことをするのかというと、野生動物がえさをあさりにこないように、とくにクマ対策です。
次、お願いします。残念ながら北海道の山へ行くと方々にクマ出没注意ということがでているんですけど、何に注意したらいいのかよくわからない。これは、北極海のスピッツベルゲン島のポスターですけれども、ちょっと上が切れていますが、クマというのは警告なしにおそってくる、で注意しろというパンフレットなんですけども、ごめんなさい、ポスターなんですけれども、ここにクマの習性のようなことが出ている。クマがこういう行動になったらあぶないぞ、注意しろ、ということがでている。でいよいよこうなったらあなたはどうしなさい、あわてるな。まず、クマというのは襲うまえに立ち上がる。立ち上がったら、銃をおもむろに発射しろ。まず銃の携行が義務つけられていますから日本とちょっと違うんですが。で一発で損じてもあわてるな、クマはそれでもすぐにはおそってこないから2発目、落ち着いて発射しろという。その前にですね、セイフティールール、こういうことをするなという、山の中といいますか、クマにおそわれないようにするためにはこういう注意をしろということがきちんと書いている。ところが残念ながら北海道の場合にはクマ出没注意、何を注意していいのかわからない、もうちょっとそういうところ、教育といいますかね、必要があるかと思うのですが。
次、お願いします。これ先ほどのヨセミテの峡谷。ハーフドームの峰とそれからテネアンの峡谷ですけど。こういう欧米の国立公園へ行って関心するのは。
次、お願いします。こういうすぐれた景観がですね、どういうふうにしてできたのかということをその目の前の景色の前にパネルがあって説明している。氷河時代があってそして湖があったんだけど、それが埋め立てられて現在の姿がある。こういうパネルが何枚かあります。まず、山が隆起するところから始まって、何枚か、そのうちの氷河の作用のところだけのしめしますけど。で日本には層雲峡にも立派なビジターセンターができましたけども、それから阿寒では川湯に立派なのがありますが、山と全く離れたところであって山の中にはこういうのがない。
次、お願いします。オーストラリアの南の方に火山が密集するところがあります。そこの火口湖ですね。それがどういう具合にできたのか。これ、目の前に湖があってそれがどういうふうにできたのかということが説明されている。読むのが面倒だという人には絵だけ見ればもうだいたいのことが分かってしまう。そういうことで日本の場合には高山植物を取ってはいけない、これはもう当たり前ですけれども、道からはずれちゃいけないとか、禁止の立て札はいっぱいありますけれども、この自然はどうして守らなければならない貴重な自然なのかという説明がどこにもない。山の下にはあるけれども目の前の自然を説明するという努力というのが全く行われてないと思います。
次、お願いします。これが最後ですけれども、南米の先端、パタゴニア地方のパイネの山並みです。これ、本当にすごい山ですけれども。
次、お願いします。この展望台にスペイン語なのでよくわかりませんけれども、しかしまあパイネ山群がどのようにして形成されたのかということだろうなあというが見当がつく。マグマがあがってきて、そして冷えて固まって、山が隆起して、そして氷河に覆われるようになって、そして削られた。それがその目の前にあるこれだ、ということでなるほどそうかということになる。目の前に実物がある。
これが最後ですが、じゃあ、スライドを終えて下さい。時間がまいりましたので、どうも尻切れトンボの話となりましたけれども。まあ大雪山を、これから大雪山の自然を守り、そしてさらには世界遺産にという運動もあると伺ったのですが、山へ登った人、せっかくここまで来たのですから、どうして大雪山がその世界へアピールするそれだけの貴重なところなのかということを分かるようにしていただきたい。残念ながら日本では山のてっぺんにはこう、杭が立っていて、黒岳頂上だとか、旭岳頂上、こんなものだれでもわかっているんですよ。黒岳登りに行くのですから、一番高い所が頂上にきまっている。それよりもこの目の前の風景がいったいどうしてできたのか、なぜ貴重なのかということをアピールしていただきたい。どうも時間おしまして、失礼します。
この講演のテープおこしは,ボランティアによって行われました.