IYMLOGO-e.gif

HOME.jpg

International Year of Mountains 2002 Japan


「国際山岳年」のバックグラウンドである
「アジェンダ21第13章」の日本語訳です.

脆弱な生態系の管理:持続可能な山岳開発

 
13.1. 山岳は水,エネルギー,さまざまな生物体系の重要な源である。また山岳は鉱物,林産物,農産物などの重要資源の源でもあり,レクリエーションの場でもある。複雑で相互に関連している地球上の生態系を代表するものとして,山岳環境は地球の存続にとって不可欠なものである。しかし山岳生態系は急速に変化している。加速度的な土壌侵食や地滑り,急激な動植物生息地の減少及び遺伝子の喪失の危機にさらされている。人間社会の側においても,山岳住民の貧困や地方固有の知識・文化の喪失の問題が顕在化している。地球の大部分の山岳地方で環境劣化が起こっている。それゆえに,山岳資源の適切な管理と山岳住民の社会経済発展が早急に求められている。
13.2. 地球人口の約10%が山岳資源に依存している。水をこの山岳資源に含めるとさらに多くの人口が山岳資源に依存している。山岳は多様な生態系と絶滅の危機にさらされている種の宝庫でもある。
13.3. 本章には二つのプログラム分野が含まれており,全世界の山岳における脆弱な生態系に関する問題を検討している。
  1. 山岳の生態系と持続可能な開発に関する知識の集積と強化
  2. 総合的な河川流域開発及び代替的生計手段の機会の促進

プログラム分野

A. 山岳の生態系と持続可能な開発に関する知識の集積と強化

行動の基礎
13.4. 山岳は人間と自然環境のアンバランスにより多大な影響を受けやすい。 山岳地帯は,大気圏内の気候の変動に最も影響を受けやすい地域である。生態系,天然資源の潜在能力,社会経済活動についての明確な情報が不可欠である。 山岳及び丘陵地帯は,多種多様な生態系を含んでいる。その垂直的な構造によって気温,降水,日照の変化を生みだす。一つの山腹で熱帯,亜熱帯,温帯,高山など幾つかの気侯帯を含むようなこともあり,個々の気候帯を含む山岳は,より大きな生態系の縮図となっている。しかしながら,山岳生態系についての知識は不足している。地球規模の山岳についてのデータベースの構築が山岳生態系の持続可能な開発に貢献する計画を進めるうえで非常に重要である。

目 標
13.5. 本プログラム分野の目的は以下のとおりである。

  1. 既存の国際的,地域的組織の活動を考慮したうえで,山岳生態系における土壌,森林,水利用,農作物,動植物資源の調査を行うこと。
  2. 既存の国際的,地域的組織の作業を考慮しつつ,統合的な管理と山岳生態系の環境アセスメントを促進する目的で,データベースと情報システムを開発,管理すること。
  3. 地域社会の参加を得て,技術,農業活動,保全活動に関連した既存の土地や水の生態系についての知識を改善,構築すること。
  4. 山岳問題に関連する既存の組織間の情報ネットワークと情報交換所を設立,強化すること。
  5. 地域の法制度を含む適切な機構を通じて,脆弱な山岳生態系を保護する地域的な努力の調整を改善すること。
  6. 山岳生態系における危険や,自然災害の評価を進めるためのデータベースと情報システムを確立するために,情報を生産すること。

行 動
(a)管理に関する行動
13.6. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した地域的,国際的組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。

  1. 山岳生態系についての多岐にわたる土地及び水についての生態学的知識を獲得するために,地方,国又は地域レベルで既存の機関を強化,又は新しい機関を創設すること。
  2. 地方住民に,環境に優しい技術,農業の使用と移転及び環境保全活動のための奨励策を提供する国家政策を促進すること。
  3. 脆弱な生態系にかかわっている国内的・地域的機関の協力と情報交換のための機構を構築することによって知識と理解を深めること。
  4. 農民や地方住民が,環境保全や再生対策に努めることを促す政策を奨励すること。
  5. 山岳地帯の統合的管理に従いながら特に,観光を開発,強化することによって山岳経済を多様化させること。
  6. 個別の山岳生態系が保持されるような方法で,すべての林業,牧畜,狩猟・採集活動を統合すること。
  7. 生物種が豊富な場所・地域に,適切な自然保護区を設立すること。

(b)データ及び情報
13.7. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的,地域的な組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。
  1. 世界のさまざまな山岳地域での水の分配と気侯の多様さを含んだ気象学的・水文学的,物理学的分析並びにその能力を維持,確立すること。
  2. 絶滅の危機にあるものを優先しながら,多様な土壌,森林,水使用及び農作物,動植物の遺伝的資源についての目録を作成すること。
  3. 土壌侵食,洪水,地滑り・地震,雪崩及び他の自然災害が起こり得る危険地域を特定すること。
  4. 近隣の工業,都市地域によって大気汚染に侵されている山岳地帯を特定すること。

(c)国際的及び地域的協力
13.8. 各国政府及び政府間組織は,以下のことを実行すべきである。
  1. 地域的,国際的な協力を調整し,山岳開発に携わっている専門機関,世界銀行,IFAD(国際農業開発基金)及び他の国際的・地域的組織,各国政府,研究機関,非政府組織の間の情報と経験の交換を促進すること。
  2. 国連大学(UNU),山岳林協会(The Woodland Mountain Institutes),  国際総合山岳開発センター(The International Center for Integrated Mountain Development),国際山岳協会(The International Mountain Society)アフリカ山岳連合(The African Mountain Association),アンデス山脈連合(Andean Mountain Association)などの山岳開発に携わっている国際的,地域的,地方のNGOの活動並びに地域,国内,国際にわたる住民ネットワークのイニシアティブを情報・経験交換を支壊しながら奨励すること。
  3. 地域的な法制度その他の方法を含めて,適切な仕組みの検討により,破壊されやすい山岳生態系を保護すること。

実施手段
(a)資金及びコスト評価
13.9. 地球サミット事務局は,本プログラムに掲げられている行動を実施するための年平均(1993−2000年)費用は,国際社会からの贈与又は緩和された条件で供与される資金約5000万ドルと推計した。この数字は,一つの示唆として規模の大きさを示した推計に過ぎず,各国政府によって検討されたものではない。 実際の費用及び緩和された条件でないものを含む融資条件は,特に実施のため政府が決定する個別の戦略や計画によって異なることになろう。
(b)科学的及び技術的手段
13.10各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的,地域的な組織の協力を得て特に,気象学,水文学,森林学,土壌学及び植物学などの科学研究や,技術開発プログラムを国内的,地域的機関を通じた普及も含めて強化すべきである。
(c)人的資源の開発
13.11各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的,地域的な組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。

  1. 山岳生態系に適合した環境上適正な技術と慣行についての訓練及び公開講座事業を開始すること。
  2. 山岳及び丘陵地域についての環境学研究,特に山岳先住民出身者に対して奨学金及び研究補助金を支給することにより高等教育を援助すること。
  3. 村落住民が,山岳生態系の持続可能な開発についての環境問題をより深く理解できるように,農民,特に女性のための環境教育を実施すること。

(d)対処能力の向上
13.12. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的,地域的な組織の協力を得ながら,脆弱な生態系の持続可能な開発についての研究,情報の普及を促進するために,国内的及び地域的な機構的基礎を構築すべきである。

B.総合的な河川流域の開発及び代替的生計手段の機会の促進

行動の基礎
13.13.  地球人ロの約半分が,さまざまな面で山岳生態や,集水河川流域の悪化によって影響を受けている。地球人口の約10%が山岳地帯に居住してる一方,約40%が隣接した中流及び下流地域に居住している。これらの河川流域では,深刻な生態系の悪化が問題となっている。例えば,南アメリカのアンデス地域の山腹では農民の大部分が,現在,土地資源の急激な悪化に直面している。同様に,農業生産に極めて重要なヒマラヤ,東南アジア,東・中央アジア及び中央アフリカの山岳及び高山地帯では,人口増加が原因となり不毛な土地の開墾による危機に瀕している。多くの地域では,これに過度な家畜の放牧や森林伐採,生物による破壊損失が加わっている。
13.14. 土壌侵食は,山岳及び丘陵地帯の降雨依存型農業を営んでいる多くの村落住民に破壊的な影響を与えかねない。この地域では,貧困,失業,不健康及び劣悪な公衆衛生がはびこっている。地方住民の効果的な参加を伴った統合的な河川流域の開発計画を促進することは,将来的な生態系の不均衡を防ぐうえで重要である。土地,水,植物,動物そして人的資源などの自然資源の基礎を保護,改良及び使用するためには,統合的な手法を用いることが重要である。それに加えて,特に,生産性を増加させるような雇用体制の開発を通じて,代替的生計手段を促進することは,山岳生態系に属する多数の地域住民の生活レベルの改善に多大な効果がある。

目 標
13.15. 本プログラム分野の目的は以下のとおりである。

  1. 西暦2000年までに,土地侵食を防ぎ,生物量生産を増加し,生態系の均衡を保つ目的で,山間部の河川流域の耕作に適・不適な,土地の両方の有効な土地利用計画及び管理を開発すること。
  2. 特に,地方社会と先住民の生計を守る目的で,持続可能な観光,漁業,そして環境上適正な鉱業など収入を生ずる活動を促進し,基盤整備と社会サービスを改善すること。
  3. 災害防止手段,危険地域指定,早期警告システム,避難計画,緊急援助供給によって自然災害の影響を軽減するために,関係諸国の技術及び組織の発達をはかること。

行 動
(a)管理に関する行動
13.16. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的及び地域的な組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。

  1. あらゆる分野で土壌侵食を防ぎ,侵食抑制活動をはかるための手段を講じること。
  2. 家畜飼育,林業,園芸及び地方開発を援助する地方行政のあらゆるレベルにおいてのイニシアティブの援助を目的とした統合的サービスを調整するために,対策委員会,又は河川流域開発委員会を組織し,既存の機関を補完すること。
  3. 適切な法令整備によって,地方資源の管理への住民参加を高めること。
  4. 地域住民の参加を促すための事業を準備している地方の機関や地域社会を支援している非政府組織及び他の民間組織を援助すること。
  5. 野生生物を保護し,生物多様性を保全し,国立公園になり得るような地域を保護する仕組みを形成すること。
  6. 農民や地方住民に保全措置を実施し,環境上適正な技術を用いることを奨励する国家施策を展開すること。
  7. 医薬及び芳香植物の栽培や加工などの小規模な農産加工業によって収入を増加させる事業を展開すること。
  8. 開発において,先住民及び地域社会を含む女性の完全参加の必要性を考慮しながら,以上のような事業を展開すること。

(b)データ及び情報
13.17. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的及び地域的な組織の協力を得て,政府は以下のことを実行すべきである。
  1. 環境的,社会経済的な事業の効果を測り,日常的業務のための情報を発するために,国及び地方レベルにおいて,組織的観測及び評価能力を確立し維持すること。
  2. 女性の役割を十分認識し,女性の計画と実行過程への参加を得つつ,村落単位での一年生作物及び樹木作物,家畜,家禽,養蜂,漁業,村落工業,市場,交通及び所得獲得機会に関する代替的生計やさまざまな生産システムについての情報を作成すること。


(c) 国際的及び地域的協力
13.18.  各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的,地域的な組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。
  1. 河川流域開発に関連する応用調査を実施するに当たって,国際農業研究協議グループ(The Consultative Group on International Agricultural Research Centers)や土壌調査及び管理のための国際評議会(The International Board for Soil Research and Management)などの国際的な調査,訓練機関,そして森林山岳協会(The Woodland Mountain Institute)や国際総合山岳開発センター(The International Center for Integrated Mountain Development)などの地域の調査セソターの役割を強化すること。
  2. 同じ山脈や河川流域に位置する,特に山岳災害や洪水によって影響を受けやすい各国間の地域協力とデータ及び情報の交換を推進すること。
  3. 河川流域開発に携わっている非政府組織や他の民間組織との提携を確立,維持すること。
実施手段
(a)資金及びコスト評価
13.19. 地球サミット事務局は,本プログラムに掲げられている行動を実施するための年平均(1993−2000年)費用は,国際社会からの贈与又は緩和された条件で供与される資金約19億ドルを含む約130億ドルと推計した。この数字は,一つの示竣として規模の大きさを示した推計に過ぎず,各国政府によって検討されたものではない。実際の費用及び緩和された条件でないものを含む融資条件は,特に実施のため政府が決定する個別の戦略や計画によって異なることになろう。

13.20. アジェンダ21の第3章「貧困の撲滅」や第14章「持続可能な農業と農村開発の促進」で検討されているように,山岳生態系における代替的生計の促進は,国全体における貧困対策,又は代替的生計計画とみなされる。
(b)科学的及び技術的手投
13.21. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的及び地域的な組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。

  1. 環境に好影響を与える伝統的な環境管理の手段・システムを特に重要視して環境保護と開発手段を統合したパイロット事業を実行に移すことを検討すること。
  2. 農業条件についての実験や試験に携わる地方の男女,研究者及びエクステンションエージェントなどの参加を通して,特定河川流域や農業のための技術を育成すること。
  3. 地方住民がその場所で,低費用・簡便・容易に活用できる,水分管理,収穫技術改善,飼料生産,林間農業などの侵食を防ぐための植物保護手段の技術を推進すること。
(c)人的資源の開発
13.22. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的及び地域的な組織の協力を得て,以下のことを実行すべきである。
  1. 地方住民の家庭生産システム,農業に適・不適な土地の保護と活用,灌漑路の処理及び地下水の貯水法,家畜管理,漁業,林間農業や園芸などについての広範囲にわたる知識を増加,普及する目的で多角的,分割的方法で促進すること。
  2. 教育,健康,エネルギーへのアクセスを促進し,それらを基盤整備することによって,人的資源を開発すること。
  3. 最新の早期警告及び予測技術と組み合わせて,災害の防止,軽減に対する地域の関心を高め,準備体制整備を促進すること。

(d)対処能力の向上
13.23. 各国政府は,それぞれ適切なレベルにおいて,関連した国際的及び地域的な組織の協力を得て環境,社会経済,技術,立法,財政,行政面での統合的なアプローチを奨励するために国の河川流域管理センターを発展,強化し,河川流域開発のため政策担当者,行政官,現場担当者,農民を支援する。

13.24. 各国政府と協力しながら,民間セクターと地域社会は小規模工業を援助し,市場への参入を目的とした情報ネットワーク,小規模の水資源開発を含んだ地方基盤整備を促進する。

環境庁・外務省監訳 (1997):アジェンダ21実施計画('97)-アジェンダ21の一層の実施のための計画-.エネルギージャーナル社.218-225ページより

LINE07.GIF